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≪患者さんに“思いやり”を発揮するのは難しい≫
「看護師さんは優しく、温かく、思いやりのある人」というステレオタイプのイメージがある中で看護師の皆さんは患者さんへ思いやり(ホスピタリティ)を発揮することを心掛けていらっしゃるでしょう。しかしとても忙しく、ストレスのかかる医療現場でその思いやり(ホスピタリティ)を発揮するのはとても難しく、思いがけない患者さんからの苦情や不満で落ち込んでしまう経験をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
“思いやり(ホスピタリティ)を発揮すること”が難しい理由の1つはその構造にあります。
思いやり(ホスピタリティ)を患者さんに届けるためには2つのステップがあります。
1つは「ホスピタリティ・マインド」、もう1つは「ホスピタリティ・スキル」です。
「ホスピタリティ・マインド」は患者さんの気持ちを理解し、共感することによって思いやりの気持ちや感情を自分の中に沸かせたり、セットすることです。
「ホスピタリティ・スキル」はその思いやりの気持ちや感情を患者さんに届くように表現することです。つまり患者さんの目に見える、耳で聞こえるなど思いやりの言葉や態度、表情、行動で表現することで、そのことによって初めて患者さんに皆さんの思いやりの気持ちや感情が気持ちが伝わるのです。つまり、この「ホスピタリティ・スキル」と「ホスピタリティ・マインド」の2つがセットになって初めて患者さんに思いやりを発揮することができるわけです。
最初の思いやりの気持ちや感情を自分の中に沸かせたり、セットするためには「感情のコントロール」が必要になります。この「感情のコントロール」能力はEmotional Intelligence(EI)、感情の知性と言われますが、1990年にピーター・サロベイとジョン・メイヤーが世界中で評価され尊敬されている人たちを調べたところ彼らは「感情の扱いに優れている」ことを見出し、相手の気持ちや感情を理解したり、感情を上手に利用したり、自分の感情をコントロールできる人がEI(感情の知性)の高い人だと言っています。このEIはIQと対比させてEQ(Emotional Intelligence Quotient:感情の知性指数)と言われる場合もありますが、皆さんもIQが高く仕事ができたとしても相手の気持ちを考えない、場の状況や雰囲気を考えない、自分の感情をすぐ表情に出す、自分の感情をコントロールできない(腹が立ったらスグ怒り出すなど怒りのコントロールができない)人を優れた人として評価したり、尊敬したりはしないでしょう。
つまり、思いやり(ホスピタリティ)を患者さんに届けるためにはEmotional Intelligence(EI)、感情の知性の高さが求められます。
看護師の仕事は「感情労働」と言われます。この「感情労働」という言葉はホックシールドという学者が1970年に「管理される心-感情が商品になる時」という本の中で初めて使った言葉ですが、「その職業としてあるべき感情が優先されるため職務上、個人の感情より職業人としての感情を求められる。従って、感情のコントロールが不可欠な職業」と定義されています。
皆さんの仕事はとても忙しくストレスもかかる仕事ですから、イライラすることも多いでしょうし、しんどいことやつらいことも多いでしょう。又プライベートなことで腹が立ったり、不愉快な日もあるかもしれません。しかし、一旦看護師としての仕事についたらそれらの個人的な感情はリセットして看護師として求められる感情にセットしなければならず、そのためには自分の感情のコントロールが必要な職業ということです。 ということは皆さんは一般の職業人と較べるととてもEIが高い人たちとみなすことが出来ます。
次回は少し踏み込んで述べてみたいと思いますが、看護師さんはその強みを発揮して“感情を上手くコントロールすること”が思いやり(ホスピタリティ)を発揮するためにとても大切であることを理解しておいてください。